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なぜこんなに悪化してしまうのか?
なぜこんなに悪化してしまうのか?
基幹病院勤務の口腔外科医やモンゴル人の方々にお話を伺うと、①歯科を定期的に受診するという概念がなく、②腫れるまで放置し、③行政の保健サービスが乏しいという点が歯性感染症の悪化の原因と思われました。口腔外科医の先生がシステムの欠如によって小さな子供たちが命を落としていくことに怒りを爆発させておられたのが印象的でした。日本人が一目で異様に感じてしまう光景を、日々なすすべもなく小さな子供たちが死んでいく姿を目の当たりにされている先生方のお気持ちが痛いほど共感できた瞬間でした。
日本では、1歳6か月(1歳から2歳で虫歯が増え始める)、3歳時(この頃までに乳歯列が完成する)に居住地の近所の保健所で歯科健診があります。保健所は、戦後、乳幼児の死亡率が高かった時代に、母子の保健衛生向上のために重要な施設として機能していました。しかし、口腔内の観察や指導にとどまるだけで実際に治療することはなく、歯科医師として、また子供を持つ母親として、保健所の健診は中途半端で本当に必要なのかと疑問を抱いたこともありました。しかしながら、今回モ...ンゴルの歯科の現状を調査して、現在のモンゴルにおいては、健診で齲蝕活動性の高いお子さんをくまなく拾い上げ、保護者に適切な指導をし、確実に歯科医院に送り届け、治療を受けさせるというシステムが必要不可欠であると認識しました。
また、ウランバートルの州立病院やセンターの歯科室では、保険適応で一部負担金が少ないということで、来院患者さんが長い列を作っていました。真夏の暑い時期でしたが、エアコンもない階段で延々と待ち続けなければならないため、気分が悪くなる人もいるとのことでした。この患者さんたちは整理券を持っていて、実はもう一か月も前から待っているのだそうです。急性症状が出ている人はどうするのですか?という質問をしてみましたが、それでも一か月待つのは変わらないとのことでした。この状況はもしかしたら、日本の昭和20~40年代と変わらないのかもしれません経済が発展し、社会保障制度が改善していけば、自然と歯科を取り巻く環境もよくなっていくのではないかと思われます。しかしながら、28%の子供たちが命を落とすという現状は、一刻も早く改善されなければなりません。